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中道政治とは、一言でいえば、仏法の中道主義を根底にし、その生命哲学にもとづく、人間性尊重、慈悲の政治

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  〈希望の指針――池田先生の指導に学ぶ〉 立正安国③ 大衆とともに新たな時代を 連載「希望の指針――池田先生の指導に学ぶ」では、テーマごとに珠玉の指導・激励を紹介します。今回は小説『新・人間革命』から、「立正安国」(全4回予定)の第3回を掲載します。 【民主主義の要諦】 人々の「健全な魂」の開花が不可欠 〈1962年(昭和37年)2月、山本伸一はギリシャのアテネを訪れた。哲人ソクラテスが投獄されたと伝えられる牢獄の前に立ち、彼を死に追いやった、アテネの「民主主義」について考える。そして、伸一は同行の幹部と、ソクラテスの弟子・プラトンについて語り合う〉   プラトンが生涯を捧げたテーマ――それは、どうすれば、この世に「正義」を実現できるのかという根本的な問題であった。その探究の結論が、「哲人政治」の理想であった。   プラトンは、大著『国家』のなかで、いわゆる“哲人王の統治”こそが、国家と人類に幸福をもたらす「最小限の変革」であると主張したのである。   彼は、政治制度の在り方を分類して、第一を哲人王による王制とし、以下、名誉制、寡頭制、民主制、僭主制の五つを挙げている。民主制は、四番目の低い評価である。   民主制は人類の偉大なる知恵であり、発明である。しかし、それも、民主制を担い立つ人間自身のエゴイズムを制御し、自律する術を知らなければ、本来の民主とは全く異質な“衆愚”に陥りかねないことへの鋭い批判の矢を、プラトンは放ったのである。(中略)   人間の魂が正しく健康でなければ、いかなる制度も正しく機能しない。水は低きに流れる。人間もまた、内なる鍛錬、人格の陶冶がなければ、欲望の重力の赴くままに堕落を免れないのである。   ゆえに、プラトンは、引き続いて「魂の健康」「魂における調和」を考察し、“自己の内なる国制”に目を向けるように促す。   “外なる国制”を正義に適った最良のものにしていこうとするならば、必然的に“内なる国制”の整備を必要とするのである。つまり、「魂の健康」を育む哲学こそが、民主制を支える柱なのである。   プラトンは「哲学者たちが国々において王となって統治するか、あるいは現在王と呼ばれ権力者と呼ばれている人々が、真実にかつ充分に哲学するのでないかぎり」、「国々にとって不幸のやむときはないし、また人類にとっても同様だ」と述べている。(中略)...

正しく知ろう新型コロナウイルス 重症化防ぐ「抗体カクテル療法」って何?

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  〈正しく知ろう新型コロナ〉71 抗体カクテル療法が拡充 抗体カクテル療法のイメージ。2種類の抗体が新型コロナウイルスの突起に付き、人間の細胞の表面に付着するのをブロックする 厚生労働省は17日に開いた専門家の分科会で、新型コロナワクチンの3回目接種の必要性を認めました。2回目接種からおおむね8カ月以上をめどに接種できるよう、準備が進められています。   こうした中、新型コロナ感染者のうち、軽症段階や重症の恐れのある人に有効な「抗体カクテル療法」が拡充されています。   これは、2種類の抗体(ウイルスなどの異物を排除するタンパク質)を組み合わせた中和抗体薬・ロナプリーブを点滴で投与し、二つの抗体で、ウイルスが細胞に侵入するのを阻止するものです。   原則、発症から7日以内に投与されるもので、臨時医療施設や自宅療養者の往診時などでも処方できるようになりました。   海外の臨床試験では、入院や死亡のリスクを約7割減らすことが確認されており、国内では、東京都の分析(9月3日時点)によると、投与から14日以上経過している420人のうち、400人の症状が改善しました。   また、国内外で、軽症段階で効く飲み薬(経口薬)の開発も進められており、早ければ年度内に飲み薬ができるかもしれないとされます。 重症化防ぐ「抗体カクテル療法」 無床診療所でも可能  公明の提案受け厚労省 新型コロナウイルス感染症の軽症・中等症患者の重症化を防ぐ効果が高い「抗体カクテル療法」について、厚生労働省は公明党の提案を受け、入院施設のない透析医療機関などの無床診療所での外来投与を認める事務連絡を28日付で、都道府県などの自治体に発出した。 同療法は、2種類の抗体を組み合わせた中和抗体薬「ロナプリーブ」を点滴で投与する。公明党の強い主張で外来投与が認められたが、実施できるのは、入院施設のある病院と有床診療所に限られていた。 事務連絡では「患者の病態が悪化した場合に、入院する医療機関と連携すること」などを条件に無床診療所での外来投与を認め、厚労省がロナプリーブを配分する対象に無床診療所を加えた。 同療法を巡っては、重症化リスクが高く、投与の対象となっている人工透析患者について、高頻度で通院する必要のある透析医療機関での投与が望ましいものの、入院施設がない場合は実施できないといった課題があった。 公...

気候変動による衝撃が、私たちが当初予想していたよりも、はるかに早く、より深刻な被害をもたらしているという

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〈危機の時代を生きる〉 コロナ後こそ気候変動対策の好機 米ジョンズ・ホプキンス大学 ヨハネス・アーパライネン教授 地球温暖化を防ぐための国際会議「COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)」が、コロナ禍による1年の延期を経て、10月31日から英国グラスゴーで開催される(11月12日まで)。 コロナ禍は、もう一つの「危機」である気候変動にどう影響しているのか――。米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院の「持続可能エネルギー政策イニシアチブ」所長であるヨハネス・アーパライネン教授にインタビューした。(聞き手=樹下智) 気温上昇を抑えるために都市封鎖を50年⁉ ――国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が先月、最新の報告書を発表し、人間活動の影響で地球温暖化が進んでいることについて「疑う余地がない」と断定しました。グテーレス国連事務総長は、報告書は「人類への赤信号」だと警告し、COP26の成功を呼び掛けています。    IPCCの報告書が明らかにしたのは、気候変動による衝撃が、私たちが当初予想していたよりも、はるかに早く、より深刻な被害をもたらしているという、紛れもない現実です。    米国の西海岸では、酷暑と乾燥によって山火事がたびたび発生し、膨大な面積の森林が焼失しています。農業で生計を立てる人が多い国では、気候変動がもたらす干ばつが深刻な問題です。例えばインドでは、耕作に適さなくなった土地から、既に多くの人々が移住を強いられています。    米国のマイアミやイタリアのベネチアなど、海面水位の上昇が重大な問題になっている都市もあります。国土の大半が低地のバングラデシュでは、海面上昇と異常気象によって土地が失われ、“気候難民”が生まれています。 次の20年から50年で、完全に海に沈むと予測されている小さな島国もあり、全人口の移住が実際に計画されています。    二酸化炭素などの温室効果ガスを排出し続ければ、こうした問題が一層深刻化し、南極の氷床が解け、海面が急上昇するという、取り返しのつかない「ティッピングポイント(転換点)」を、人類は迎えることになります。水や食料などの資源が枯渇し、人々は生活できる場所を追われます。大規模な移民の発生によって、世界はより敵意に満ちたものになるでしょう。    ――昨年からのコロナ禍によって世界の経済活動は停...

ユニセフの調査  世界では、5分に1人のペースで、子どもが暴力によって亡くなっている

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  〈共生の地球社会へ~仏法の英知に学ぶ〉 テーマ:非暴力の精神 登場人物 【ミライさん】好奇心旺盛な女子部員。世の中の出来事について、父・ホープ博士と語り合うことを楽しみにしている。 【ホープ博士】勉強熱心な壮年部員。毎月1回、家族と一緒に教学を研さんしている。「博士」はニックネーム。本業は会社員。 自他共の尊厳を守る信念を強固に ミライ 今月、アメリカ・ニューヨークの国連本部で国連総会が行われているね。緊迫するアフガニスタン情勢をはじめ、人道危機に対応するための議論が始まるようだね。    ホープ ユニセフ(国連児童基金)の調査によれば、世界では、5分に1人のペースで、子どもが暴力によって亡くなっている。 SDGs(持続可能な開発目標)では、「平和と公正をすべての人に」という目標の下、「あらゆる場所において、全ての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる」ことなどを掲げているんだ。 瞋恚の克服 ミライ なぜ同じ人間同士で憎しみ合い、暴力や争いにエスカレートしてしまうんだろう?    ホープ この問題を仏法の眼で捉えてみよう。仏法では、「合戦は瞋恚よりをこる」(御書1064ページ)と、戦争の要因は、怒り、恨む生命にあるといわれている。瞋恚とは、例えば、裏切られ、踏みにじられたと感じることで心の奥底に蓄積する“負のエネルギー”ともいえるよ。    ミライ 「瞋るは地獄」(同241ページ)とあるように、瞋恚は地獄界の境涯のことだね。    ホープ そうだよ。生命が瞋恚に支配されてしまうと、相いれない対象を「敵」「悪」と見なし、やがて敵意が暴力・武力となって現れ、争いに発展してしまうんだ。自身を「善」、他者を「悪」と分け隔てる善悪二元論的な思想では、双方に恐怖や不信が増幅され、やがては社会の分断を深めることにつながりかねない。    ミライ こうした負の連鎖は、人間の業ともいえるね。    ホープ 仏法で説く「 十界互具 」は、とても示唆に富んでいるよ。 「 十界 互具」では、私たちの生命が善の境涯にあったとしても、悪の境涯も同時に具わっていて、生命の状態は縁に触れて変化を繰り返すと説くんだ。だから、たとえ瞋恚の生命に覆われていても、決して固定的に捉えるのではなく、変革の可能性があると見つめるのが、仏法の生命観なんだよ。 池田先生は語られているよ。 ...

憲法の第二〇条の「政教分離」は宗教が政治に関与することや、宗教団体の政治活動を禁じたものではない

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  〈希望の指針――池田先生の指導に学ぶ〉 立正安国② 「人間」こそ我らの原点 連載「希望の指針――池田先生の指導に学ぶ」では、テーマごとに珠玉の指導・激励を紹介します。今回は小説『人間革命』『新・人間革命』から、「立正安国」(全4回予定)の第2回を掲載します。 【創価学会の使命】 平和担う人材育てる「教育的母体」 <1956年(昭和31年)7月、創価学会は初めて参議院議員選挙に候補(全国区4人、地方区2人)を推薦。山本伸一が指揮を執った大阪地方区は勝利を収めたが、当選は6人中3人にとどまる。伸一は、戸田城聖と今後の支援活動について語り合う>   戸田は、急に観点を変えて話しだした。    (中略)   「新しい民衆の基盤から、新しい民衆の代表である政治家を誕生させることが、今ほど望まれている時代はないだろう。創価学会から、同志を政治の分野に送ったのも、時代の要請ともいえる。(中略)   今回の選挙でも、学会の支援活動は、政治に無関心であった多くの人びとに、政治への関心をもたせた。これには、大きな意味がある。本来、政治は民衆のものだから、人びとが、政治を監視する意識をもつことが大事だ。そうした土壌を深め、広げていけば、そこから、新しい本格派の政治家が出現していくにちがいない。政治家を育てるのは、結局は民衆であるからだ。   将来、何十年先になるかわからないが、多くの民衆の期待に応え、衆望を担う真の政治家が、続々と出現したらどうだろう。世論は、彼らを信頼するに足る政治家として、支持するにちがいない。(中略)   政治家一人では、何もできるものではない。民衆が大事なんだよ。つまり、人間が原点だ。人間が的だよ。   また、こうも考えられる。   広宣流布が進んでいけば、社会のあらゆる分野に人材が育っていく。政治の分野にも、経済の分野にも、学術・芸術・教育など、どんな分野にも、社会の繁栄、人類の平和のために、献身的に活躍している学会員がいるようになるだろう。(中略)   要するに、創価学会は、人類の平和と文化を担う、中核的な存在としての使命を課せられることになると、私は考えている。   伸ちゃん、創価学会は、そのための人材を育て上げていく、壮大な教育的母体ということになっていくんじゃないか。要は、『人間』をつくることだ。伸ちゃん、この人間革命の運動は、世界的に広がっ...

創価学会の信仰活動は、社会の平和と安穏を目指す「広宣流布」と、自身を変革し向上していく「人間革命」の両輪

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  〈危機の時代を生きる〉 京都大学こころの未来研究センター 広井良典教授㊦ 個人のたゆまぬ自己変革の挑戦から 対立超える「地球倫理」が生まれる 仏教などの普遍的な思想や宗教が花開いたのは、紀元前5世紀ごろ。人類は今、再び新たな思想を必要としている――京都大学こころの未来研究センターの広井良典教授はそう語る。25日付の㊤に続き、これからの時代に求められる「地球倫理」の実相や、宗教の役割などについて聞いた。(聞き手=萩本秀樹、村上進) ――インタビューの前半では、人口と経済は「拡大・成長」「成熟」「定常化」というサイクルを3度繰り返し、いずれのサイクルでも、人間の内面の深化が定常化への移行の転機となることを語っていただきました。人類が「第3の定常化」の時代に入ろうとする今、必要とされる「地球倫理」とはどのようなものでしょうか。    気候変動などの問題が広く議論される今では、あえて「地球」を打ち出すこと自体に目新しさはないかと思います。しかし一つ確認したいのは、「第2の定常化」への移行期となった、紀元前5世紀ごろの諸思想が誕生した「枢軸時代」「精神革命」においては、私たちが現在使う「地球」という概念は、まだ存在していなかったということです。 その時代に重要な意味をもったのは「宇宙」という概念であり、“宇宙において人間はどういう存在か”といった問いに答えるべく、仏教や儒教、ギリシャ哲学、キリスト教やイスラムの原型である旧約思想が生まれました。ここでいう宇宙とは、森羅万象の全体や、秩序といった意味合いが強いものでした。   つまり、環境や資源が限られた地球という視点は、現代の新しい概念であり、これからの倫理観を考える上でのキーワードなのです。 地球倫理には、大きく三つの柱があります。一つ目は、「地球資源・環境の有限性を認識すること」であり、その重要性はこれまで述べてきた通りです(25日付)。   二つ目は、「風土の相違に由来する、文化や宗教の多様性を理解すること」です。 「枢軸時代」に誕生した多様な思想、宗教は、普遍性を持ちながら、実際には、その内容は互いに大きく異なっていました。その理由は、それぞれの世界観や自然観が、生まれた地域の環境や風土を色濃く反映していたからではないかというのが、私の見方です。   例えば、砂漠のような環境に住んでいる民族にとっては、いか...