介護は、どのように始まるのでしょうか。病気や骨折をきっかけに入院し、介護生活に突入するというケースが、圧倒的に多いのです。
〈介護〉 介護は突然始まる 知っておきたいお金の話㊤
家族が病気やけがで、突然、介護が必要に――そんなとき、お金の不安を解消するためには、何をすればいいのでしょうか。介護保険サービスを受ける手順や、知らないと損をする公的な支援について、株式会社アテンド代表・河北美紀さんのアドバイスを2回にわたって紹介します。
本人も家族も、思いがけず始まる突然の介護。だからこそ、“準備も心構えもできていなかった”という状況になりがちです。
やはり気になるのは、介護生活になった場合の費用ではないでしょうか。全体の平均は「7~8万円」という試算がありますが、実際は、介護の内容によって大きく異なります。
例えば、デイサービスに週1~2回通うだけなら、月5000円程度で済むかもしれません。平日、ヘルパーさんに来てもらい、介護全般をしてもらう必要があれば、月2万円以上になるでしょうか。有料の介護施設に入所すると、入居費や食費、サービス費など合計で、毎月20万円以上の人もいます。
決して介護は、ひとごとではありません。いざ介護生活になったら、誰が、どこで介護をするのか、どのような生活を送りたいか――予算も踏まえ、事前に家族で話し合っておくことが大切です。
介護保険のサービスを利用するためには、市区町村へ要介護認定の申請を行う必要があります。
「申請のため行政への書類提出が必要」と聞くと、難しそうなイメージがあり、心配になるかもしれませんが、大丈夫です。そんなときのために、「地域包括支援センター」があるので、安心して相談してください。
また、介護保険の手続きは、ケアマネジャーが代行できるので、病院での入院中に、気付いたら介護申請が終わっていたというケースも多いかもしれません。
負担限度額を超えた分が払い戻される「高額介護サービス費支給制度」や「高額療養費制度」など、介護にかかわる支援制度はたくさんあります。具体的にどれが対象になるのか、結局いくら必要なのかなど、「お金のことはお住まいの市区町村の役所へ」「介護で心配なことは、地域包括支援センターで相談」と覚えておくとよいでしょう。
次にケアマネジャーを交え、どのような介護生活にしていくか、要介護度に応じたケアプランを検討し、いよいよ介護生活がスタートします。
介護保険のサービスとは違い、自己責任で申請しなければ、受けられない国や市区町村の経済的な支援(手当)もさまざまあります。
特に覚えておいてほしいのは、「特別障害者手当」と「介護手当(総称)」です。
これらの申請は、地域包括支援センターではなく、市区町村の役所内にある「介護保険課窓口」(行政により名称が異なる)に行く必要があります。
特別障害者手当は、身体の状況や所得制限などの受給要件を満たしていれば、障害者手帳を持っていなくても受給できる国の手当です。申請が通れば、毎月2万7350円、年間で32万8200円も受けられます。
認知症が重度の人や、要介護4~5の人など、実は、要件を満たしているにもかかわらず、受け取れることを知らない人も多々います。
ただ、あくまで申請は自己責任になります。「誰も教えてくれなかった」と、後悔しないよう、家族が積極的に市区町村の窓口に相談に行くことを忘れないでください。
各市区町村による介護手当(総称)がありますが、その内容は自治体によって、大きく異なります。ここでいう介護手当とは、主に「お金の支援」と「現物支給」の二つです。これも、市区町村の介護保険課窓口で申請が必要です。
できれば直接、窓口に足を運び、どのようなサービスが受けられるか、確認をするとよいでしょう。詳細が書かれたプリントや冊子をもらえることが多いと思います。
特に、必ず確認したいのが、お金の支援があるかどうかです。要件はありますが、半数以上の市区町村に介護手当の制度があり、地域によっては毎月3000円~4万円の金額を支給しています。窓口で「お金が支給される手当は、ありませんか?」と、具体的に聞くとよいでしょう。
お金の支援について、“ホームページで調べても、よく分からなかった”という人もいるかもしれません。その原因の一つが、名称が異なる点です。市区町村によって、お金の支援制度のことを「介護手当」ではなく、「熟年者激励手当」「家族介護慰労手当」などと呼ぶところもあるのです。
また国は、在宅医療・介護を推進しているので、在宅介護への支援が手厚くなっていることもポイントです。各種サービスを見逃さないようチェックして、少しでも金銭的な不安を解消してほしいと思います。
・電車やバスの割引
・紙おむつの支給
・寝具乾燥消毒、寝具クリーニングサービス
・理美容割引券
・認知症ホットライン
・徘徊高齢者探索システム
・補聴器購入の助成
・配食サービス
・シルバーカー給付
かわきた・みき 株式会社アテンド代表取締役。大手銀行で10年ほど窓口やローンアドバイザー業務に携わった後、2013年に株式会社アテンドを設立。同年6月に高齢者リハビリデイサービス「あしすとデイサービス」を開所し、訪問介護、介護保険対象外の外出支援なども行っている。自身も35歳で父親の介護を経験。「介護する人・される人双方が安心して暮らせる介護ノウハウの提供と環境づくり」にまい進している。
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