〈ロータスラウンジ――法華経への旅〉第32回 妙音菩薩品第二十四

  • 妙音とは、真心の声、確信の言葉、正義の叫び

法華経について、皆で学び、深めよう――「ロータスラウンジ――法華経への旅」の第32回は、「妙音菩薩品第二十四」です。


 
 

■大要

妙音菩薩が、娑婆世界にやって来て、帰っていった物語です。それでは内容を追ってみましょう。
 
 
 ●シーン1
その時、釈尊は、眉間から光を放って、東方の百八万億那由他恒河沙の諸仏の世界を照らします。

それを過ぎた所に、「浄光荘厳」という世界があり、そこに「浄華宿王智」という名前の仏がいます。その仏は、無量無辺の菩薩たちに尊敬されており、その人たちのために法を説きます。釈尊が、その国を光で広く照らします。
 
 
 ●シーン2
その時、この浄光荘厳という国に「妙音」と名付けられた一人の菩薩がいます。妙音菩薩は、さまざまな徳を積み、無量の諸仏に親しみ、近づき、供養して、甚だ深い智慧を成就し、さまざまな大三昧(心を統一した大境涯)を得ます。

釈尊の放つ光が、妙音菩薩を照らします。すると妙音菩薩は、浄華宿王智仏に申し出ます。

「娑婆世界に行って、釈尊を礼拝し、親しみ、近づき、供養し、さまざまな菩薩にお会いしたい」

その時、浄華宿王智仏が、妙音菩薩に告げます。
「娑婆世界を軽んじて、下劣であるとの思いを生じてはならない。釈尊の娑婆世界には、高低があり、泥や石や山が多く、穢らわしき悪に満ちている。仏の身も、菩薩たちの身も小さく、それに比べ、あなたは、はるかに大きく端正で、福徳にあふれている。だからといって、娑婆世界に行き、その世界を軽んじて、仏や菩薩や国土に下劣であるとの思いを生じてはならない」

妙音菩薩は、浄華宿王智仏に言います。「私が今、娑婆世界に行くのは、全て如来の力によってです」

妙音菩薩は、立ち上がることも、身動きもせずに、霊鷲山の説法の場から遠くない所に、宝でできた八万四千の蓮華を出現させます。
 
 
 ●シーン3
その時、文殊師利菩薩が、蓮華を見て、釈尊に言います。
「どのような理由で、このような瑞相を現しているのでしょうか」

その時、釈尊は、文殊師利菩薩に告げます。
「妙音菩薩が、浄華宿王智仏の世界から、八万四千の菩薩に囲まれて、この娑婆世界に来て、私を供養し、親しみ、近づき、礼拝したいと望み、さらに法華経を供養し、聴きたいと欲しているのだ」

文殊師利菩薩は、釈尊に言います。
「妙音菩薩は、どのような修行をして、大神通力を得たのでしょうか。どうか教えてください。そして、妙音菩薩に会わせてください」

その時、釈尊は文殊師利菩薩に、多宝仏が皆のために願いをかなえてくれると言います。

その時、多宝仏は、妙音菩薩に告げます。「来たれ! 文殊師利菩薩が会いたいと願っている」

妙音菩薩は、八万四千の菩薩と共に「七宝の台」に乗り、通り路を震動させ、宝でできた蓮華を降らし、種々の天の音楽を鳴らしながら、娑婆世界の霊鷲山にやって来ます。

妙音菩薩は、七宝の台を降りて、釈尊のもとへ行き、礼拝し、浄華宿王智仏の言葉を釈尊と多宝仏に伝えます。

その時、華徳菩薩が、釈尊に語ります。「妙音菩薩は、いったい、どんな善根を植えて、このような神通力を得たのですか」

そこで、釈尊が華徳菩薩に、妙音の過去世を明かしていきます。

――昔、雲雷音王仏の時に、仏に十万種の舞踊と音楽、そして八万四千もの七宝の鉢を供養した。その功徳で、妙音菩薩として生まれ、さまざまな神通力や福徳を具えることができた、と。

さらに華徳菩薩に呼び掛けます。

「あなたは、妙音菩薩の身が、ここにあると見るが、妙音菩薩は、種々の身を現して、多くの衆生のために、この経典を説くのだ」

続いて、梵王、帝釈、自在天……と、妙音菩薩が現す三十四の形(三十四身)が示されます。

その中で、「妙音菩薩は、能く娑婆世界の諸の衆生を救護する者なり。是の妙音菩薩は、是くの如く種種に変化し身を現じて、此の娑婆国土に在って、諸の衆生の為に、是の経典を説く」(法華経616ページ)と、娑婆世界の衆生の救済に働くことが記されます。

その時、華徳菩薩が仏に言います。

「妙音菩薩は、どのような境涯を得て、衆生を救済するのでしょうか」

仏は、華徳菩薩に告げます。

「(妙音菩薩の)その境涯を『現一切色身』(十界の一切衆生の姿を自在に現せる)と名付ける。その境涯によって、至る所に姿を変じて現れ、衆生を救済する」

妙音菩薩と共に来た八万四千の菩薩、そして娑婆世界の無量の菩薩は、皆、「現一切色身三昧」を得ます。
 
 
 ●シーン4
その時、妙音菩薩は、釈尊や多宝仏に、あいさつし、本土(浄華宿王智仏の世界)に帰ります。

帰りもまた、通り路を震動させ、宝の蓮華を降らし、百千万億の種々の音楽を奏でていきます。

本土に帰った妙音菩薩は、浄華宿王智仏に、娑婆世界での出来事を語ります。

この品が説かれる時、四万二千の天子は無生法忍(消滅を超えた不変の真理を覚った境涯)、華徳菩薩は法華三昧(法華経による心を統一した境涯)を得ます。

――このように、娑婆世界に行き、自由自在の姿で民衆救済に立ち上がった妙音菩薩の物語が説かれるのが、妙音菩薩品です。 
 

【『法華経の智慧』から】 大宇宙そのものが「生命の交響曲」

宇宙全体が「妙音」を奏でているのです。大宇宙そのものが「生命の交響曲」であり、森羅万象が歌う「合唱曲」であり、セレナーデ(小夜曲)であり、ノクターン(夜想曲)であり、バラード(物語風の歌謡)であり、オペラであり、組曲であり、ありとあらゆる「妙音」を奏で、「名曲」を奏でている。その根源が「妙法」です。「南無妙法蓮華経」です。だから本当は、勤行も、朝は胸中に太陽が昇る「目覚めの歌」であり、夜は胸中を月光で照らす「夜想曲」であり「月光の曲」なのです。

 ◇ 
 文底から見るならば、妙音菩薩も、苦しみと戦い、戦い、また戦って、題目を唱え、人間革命したのです。(中略)私たちも同じだ。つらいことがあっても、負けないで、題目を唱えながら前へ前へ進むのです。

 ◇ 
 友を励ます「真心の声」。それが「妙音」です。人の心を揺さぶる「確信の言葉」。それが「妙音」です。悪を破折する「正義の叫び」。それが「妙音」なのです。(普及版〈下〉「妙音菩薩品」)
 
 

【コラム】 あえて大変な所へ

「妙音菩薩品」では、仏が、苦悩渦巻く娑婆世界に行きたいと願った妙音菩薩に、そこで暮らす人々や国土を下に見てはならないと戒めます。その後、妙音菩薩は、自在に姿を現して、衆生を救済していきます。

「御義口伝」には、「所用に随って諸事を弁ずるは、慈悲なり。これを『菩薩』と云うなり」(新1077・全774)と仰せです。妙音菩薩が自在に姿を変えたのも、衆生を救いたいとの慈悲の力によってです。 

今、自分が置かれている環境が、どんなに大変であったとしても、そこが自ら望んだ使命の舞台です。

池田先生は、「いちばん大変なところで法を説き、法を弘めている方々を絶対に軽んじてはならない! 見かけで判断してはならない! 最高に尊敬していきなさい!」と語っています。

あえて大変な所へ――悩める人の最大の味方となる時、生命の本源の力を、自由自在に発揮できるのです。

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