限度額認定を受けられれば、それが月額1~5万円程度で済むため、表の第1段階の方なら年間で最大120万円程度、負担を減らすことができます。

 

〈介護〉 介護は突然始まる 知っておきたいお金の話㊦

    株式会社アテンド代表 河北美紀さん




    突然始まる介護で、直面する費用の問題。㊦の今回は、負担限度額認定の仕組みや、生命保険の見直し、お金をかけるメリットについて、株式会社アテンド代表の河北美紀さんに聞きました。

    施設での費用負担を軽減


    介護施設への入所を検討するとき、絶対に知っておいてほしい制度が「介護保険負担限度額認定」です。

    年収と資産の条件(表)を満たしている人が対象となりますが、「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」「介護医療院」といった介護保険施設を利用する場合、食費と居住費の自己負担額を軽減できます。

    施設介護サービス費は一律の定めがありますが(地域差あり)、食費や居住費は施設により多少異なります。例えば、1日当たりの食費が1500円、居住費は2000円かかる施設に入った場合、食費と居住費だけで月額約11万円かかります。限度額認定を受けられれば、それが月額1~5万円程度で済むため、表の第1段階の方なら年間で最大120万円程度、負担を減らすことができるのです。

    ただ、この制度は自己責任で市区町村に申請しなければなりません。知らずに、本来公助される金額を払ってしまっているケースが実際にあります。しかも、後からさかのぼって申請はできません。事前に知っておかないと、損をしてしまうので注意しましょう。申請や要件の確認についてはお住まいの市区町村にお問い合わせください。

    負担限度額認定の条件




    一言アドバイス

    特別養護老人ホーム(特老)の空きがなくて悩んでいる人もいるのではないでしょうか。都心では“200人待ち”といわれることも。ただ、近隣他県に空きがあることも少なくありません。知っておくことで、選択肢が一つ増えるかもしれません。
     もし近隣他県の施設に空きがあり入所することになった場合、施設のある市区町村ではなく、入所者が元々お住まいだった市区町村を保険者とする特例が設けられており、これを「住所地特例」といいます。

    生命保険の見直しを

    介護保険のサービスを活用しつつ、それ以外の出費も抑えたいところ。特に固定費の見直しは大切です。ぜひ確認してほしいのが、介護生活になるきっかけとなった病気やけがで使用した生命保険です。

    例えば、脳梗塞で倒れ、生命保険で入院費などを支払った場合。退院後、脳梗塞が原因で他の病気を併発したり、まひが残った状態で転んだりしても、「一度、脳梗塞が理由で保障を受けているから、それに付随した保障は受けられない」となるタイプ(種類)の保険もあるのです。

    ほとんど入っている意味がないのに、継続してしまっている保険もあります。決して安くない、毎月の固定費。介護生活になったら、一度、生命保険会社へ内容の確認をするなど見直しをしてみるべきでしょう。ただ、高齢になって調べるのは大変。できれば、家族が積極的に確認してあげてほしいところです。


    節約だけが正解じゃない


    介護が始まると、“すべて自分で”と抱え込んでしまう人も少なくありません。ぜひプロに頼ってほしいと思います。

    不慣れな介護は、心身ともに大きな負担となります。介助するときに自分が腰を痛めてしまったり、介助される側も、実は痛い思いをしていても、我慢してしまったり。そこにプロが入ることで、正しい知識と経験が培われます。また、専門職の人が定期的に来てくれることで、悩みを相談できる機会になります。

    在宅介護の場合、家族以外とのコミュニケーションが生まれることも大きなメリットの一つ。ヘルパーさんにあいさつしたり、会話したりする中で、頭を働かせ、気を使うことが、認知症の予防になります。

    “介護は長期戦”――だからこそ、一人で抱え込まず、一人に抱え込ませず、「チームでやる」意識を持ってほしいところです。プロも介護はチームでやります。ケアマネジャーと訪問医療の医師、デイケアのスタッフ、ヘルパーら、それぞれの専門家が集まり、一人の介護方針を検討していくのです。

    介護のお金は、節約だけが正解ではありません。制度はしっかり活用しつつ、介護する側・される側の幸せのために、必要なお金は使っていくという考え方も大切ではないでしょうか。

    かわきた・みき 株式会社アテンド代表取締役。大手銀行で10年ほど窓口やローンアドバイザー業務に携わった後、2013年に株式会社アテンドを設立。同年6月に高齢者リハビリデイサービス「あしすとデイサービス」を開所し、訪問介護、介護保険対象外の外出支援なども行っている。自身も35歳で父親の介護を経験。「介護する人・される人双方が安心して暮らせる介護ノウハウの提供と環境づくり」にまい進している。

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