高齢者だけでなく若い世代での発症がみられ、全体の6割程度が脳梗塞となっているという

 

若い世代での発症も増えている「脳卒中」〈医療〉

  • 今日のポイント 生活習慣の改善で予防を!

生活習慣が発症に大きく関係しているとされる「脳卒中」。近年は、高齢者だけでなく若い世代での発症も増えています。この病気について、国立循環器病研究センターの猪原匡史部長(脳神経内科)に聞きました。(2020年11月16日付)
 
 

全体の6割程度が「脳梗塞」

脳卒中には、大きく分けて、脳の血管が詰まる「脳梗塞」と、脳の血管が破れる「脳内出血」「くも膜下出血」があります。

厚生労働省の発表した「人口動態統計の概況」によると、2017年に、脳血管疾患で亡くなった方は11万人弱で全死因の3番目です。

そのうち、最も多かったのが脳梗塞で約6万2000人、脳内出血は約3万3000人、くも膜下出血が1万2000人でした。
以前は、圧倒的に脳内出血が多かったのですが、近年は血圧のコントロールが可能になったことや塩分摂取量の減少などにより、全体の6割程度が脳梗塞となっているのです。

死亡者数は減少しているものの、脳卒中を発症すると、約4割は寝たきりや一部の介助が必要な状況となってしまうというデータもあり、要介護になる疾患の第1位です。

そうした意味からも脳卒中は、なるべく防ぐことが大切で、万が一発症したら、すぐに対応をしなければなりません。

また、高齢者の男性に多い疾患とされていましたが、近年は、栄養状態が良くなった影響(若い方の糖尿病や脂質代謝異常が増えている)からか、比較的に若い世代での発症も見られるようになっています。
 
 


顔の片方の口角が上がらなかったり、ゆがんだりする(PIXTA)   
「FASTチェック」で確認

脳梗塞の典型的な前触れ症状は、半身の脱力やしびれ、失語やろれつが回らないといった言語障害などです。
通常、痛みがないのが、心臓血管が詰まった際との大きな違いです。
脳梗塞を疑ったときには、早期発見するための「FASTチェック」を行ってください。

すなわち、「Face」として、「イー」と言った時に、顔の片方の口角が上がらない、あるいはゆがんでいないか。「Arm」として、手のひらを上に向けて両腕とも前に伸ばした状態で維持できるかどうか。「Speech」として、言葉に障害がないかどうかです。

それらの異常が二つ以上あれば、ほぼ確実に、一つでもあれば5割程度が脳梗塞ですので、症状が起こった「Time(時刻)」を確認して、すぐに救急車を呼ぶようにしてください。
一方で、くも膜下出血では、経験したことのないような頭痛があります。
 
 


「FASTチェック」の一つ。手のひらを上に向けて両腕とも前に伸ばした状態で維持できるか確認(PIXTA)   

「血栓溶解療法」と「血管内治療」

脳梗塞の場合、医療機関では、問診のほか、磁気共鳴画像装置(MRI)、コンピューター断層撮影(CT)などの画像検査を行います。

そして、できるだけ早く詰まった血栓を取り除く治療が行われます。
その一つが、「血栓溶解療法」です。最も有効なのが、「組織プラスミノーゲンアクチベーター(t―PA)」という薬剤を点滴静注するものです。

ただし、血流が再開した際に出血が起こる可能性を考え、専門の医師のいる医療機関で、発症後4時間半以内に使用することになっています。

以前は起床時に発症に気が付いた場合、正確な発症時間が分からないために使用できませんでしたが、近年は、MRI検査の結果がある基準を満たすことで発症時刻を推定し、t―PA使用を検討できるようになりました。

もう一つの治療が「血管内治療」です。脚の付け根からカテーテルを挿入し、脳内に詰まっている血栓を直接、取り除くものです。

ステント型と吸引型の2種類があり、「心原性脳塞栓症」というタイプでは、主にステントリトリーバーという金属製の網目状の筒で血栓を絡め取ります。

「アテローム血栓性脳梗塞」と呼ばれるタイプでは、カテーテルの先端に付けた器具で血栓を吸い取る方法が主に行われます。
近年は、後遺症を軽減するために、血栓溶解療法と血管内治療を併用することが多くなってきています。
 
 

日頃から危険因子をコントロール

脳卒中の要因には、動脈硬化や心房細動(不整脈)などが挙げられます。
動脈硬化は、高血圧、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)など、いわゆる生活習慣病と呼ばれるものと大きく関係しています。

近年は、そうした危険因子をコントロールするための薬、あるいは血栓を溶かす薬などを使うことで予防ができるようになっています。
その上で、食生活を見直し、血圧は120/70㎜Hg程度、LDL(悪玉)コレステロールは140㎎/㎗以下となるようにしてください。

また、糖尿病の指標となるHbA1cについては過度な低血糖にならないように気を付け、6・0%程度未満を目標にするとよいでしょう。

さらには、多量の飲酒や喫煙は避けるとともに、自身の体力に見合った適度な運動をするなど、生活習慣の改善に努めてください。

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